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意図的主体性のロボット的構築に向けて(H23 ~ 26)

科研費プロジェクト「意図的主体性のロボット的構築に向けて」の活動報告・研究成果

(平成24年4月1日現在)

 本プロジェクトの活動期間は、平成23年度から平成26年度までの間である。したがって、以下では、本プロジェクトのグループ全体としての活動報告と研究成果を年度ごとに紹介するが、本プロジェクトに先立ち、その前提となった3つの科研費プロジェクトの研究成果についても、続けて紹介する。

Ⅳ 平成26年度

1.国際認知科学会(CogSci2014 ケベック)での発表

  • 平成26年7月25日、ケベック・シティ・コンベンションセンター(カナダ)で開催された国際認知科学会において、以下の内容の発表を行った。
  • “Effects of uncovering gaze target mismatch in human-robot joint visual attention on evaluation of understanding and impressions of robot”, T. Konno, S. Nagataki, M. Shibata, T. Hashimoto, H. Ohira, The Annual Meeting of the Cognitive Science Society 2014,Quebec City Convention Center(Quebec), Canada, 2014, 7, 25.
  • 発表の趣旨: 基本的には、これまでの研究成果に基づきつつ、とくに今回は、昨年12月のHAIでの発表内容を概念的にまとめ、被験者がロボットとの意図の食い違いを発見したときにロボットに対してどのような態度および主観的印象を持つか、ということのインタラクション上の意味を探究した。われわれの想定と整合的な形で、ロボットの<意図の自律性>はロボットがわれわれに与える<抵抗性>に大きく依存することが確かめられた。これは、次期科研費で追求する予定の「ロボットの個性」に関する研究方向を定めるものだ、とわれわれは考えている。(発表ポスターPDF)
金野さん

ポスターを前にする金野氏と柴田

ポスターの内容

会場の入り口

Ⅲ 平成25年度

1.国際認知科学会(CogSci2013 ベルリン)での発表

  • 平成25年8月1日、フンボルト大学(ベルリン)で開催された国際認知科学会において、以下の内容の発表を行った。
  • Reciprocal Ascription of Intentions Realized in Robot-human Interaction, S. Nagataki, M. Shibata, T. Konno, T. Hashimoto, THE Annual Meeting of the Cognitive Science Society 2013, Humboldt University (Berlin, Germany), 2013, 8, 1.
  • 発表の趣旨: ロボットが、(1)相手(複数の被験者)の視線対象に対する共同注意の経験を積み、それをそのロボット固有の記憶として蓄積するだけでなく、(2) 相手(複数の被験者)の情動表現から対象分類の内的カテゴリー(としての情動状態)を独自に形成するほどに、内部メカニズムが複雑になればなるほど、ある面で共同注意のパフォーマンスは効率的でなくなる一方で、ロボットに対する被験者の印象は、「機械的・自動的」というものから「人間的・自律的」といったものに変化していくことが確かめられた。これは人間の幼児に見られる認知発達上のU字曲線になぞらえることができる、とわれわれは解釈している。
発表ポスターを前にする長滝氏と柴田

発表ポスターを前にする長滝氏と柴田

フンボルト大学

フンボルト大学

発表ポスター

発表ポスター(スライドタイプPDF)

入り口の古本市とフンボルト大学

入り口の古本市とフンボルト大学

2.HAI(Human-Agency Interaction)2013シンポジウムでの発表

  • 平成25年12月8日、岐阜大学サテライトプラザで開催。
  • 「ロボットとの共同注視場面において注視対象の確認手続きが与える主観評価への影響」について、口頭発表を行った。これは、ベルリンでの発表後、金野氏のもとでさらに実験結果を積み重ね、ロボットに対する「主観評価」の視点で洞察をまとめたものである。(発表論文PDF)。この発表で学会「優秀賞」を受賞(賞状と盾)。
金野さん

スライドを軽やかに説明する金野氏

会場の様子

会場の様子

3.第1回研究打ち合わせ

  • 平成25年12月29日、中京大学八事学舎センタービルにおいて、以下の内容の研究打ち合わせを行った。
  • 今回の研究打ち合わせでは、ベルリンにおける国際認知科学会での発表、岐阜大学サテライトプラザにおけるHAIでの発表に関する報告をもとに、今後の研究体制と次期の科研費プロジェクト申請について協議を行った。
  • この会議において、金野氏の提案を踏まえ、それを予備ステップとして含む形で、次年度以降の2つの大きな目標が設定された。それらは、「共同注意」現象の枠内で、ロボットの内部状態を必要最小限の範囲内でさらにリッチにするという基本的な方向性を維持しつつ、(1) ロボットの側からの始発型共同注意(initiative joint attention)を実現すること、(2) 入れ子構造の相互意図理解をロボットと人の間で実現することの2つである。今年度の残り期間と来年度は、基本的に、この目標達成に向けての準備期間とすることで全体の合意が得られた。
休憩中も議論(?)

休憩中も議論(?)

金野氏提案の今後の課題

金野氏提案の今後の課題

Ⅱ 平成24年度

1.第1回研究打ち合わせ

  • 平成24年8月5日、北海道大学で開催
  • 山田友幸教授(北海道大学大学院文学研究科)と意見交換を行い、以下の3つの議題について検討した。
  • (1)国際学会発表について:2013年8月にベルリンで開催予定の国際認知学会で発表を行うための準備を進めることを確認した。
  • (2)共同注意ロボットの作成・実験状況と今後のスケジュールについて:金野氏からの報告と、8月25~26日に開催予定の第2回「研究打合せ」の内容を検討した。
  • (3)成果の出版計画について:本科研プロジェクトの成果を論文集として公刊するために,内容・計画及び出版社を検討した。

2.別府哲先生講演会と第2回研究打ち合わせ等

講演の準備をする別府先生

  • 平成24年8月25日~26日、旅館「十八楼」(岐阜市)で開催。
  • 別府哲教授(岐阜大学教育学部)に「自閉症と共同注意:心の理解」について講演していただき、あわせて同教授を交え「ロボットによる共同注意行為の実現」に関して研究打ち合わせを行った。また、来年夏の国際認知学会での発表および論文集公刊についても検討した。

3.第3回研究打ち合わせ

実験者と視線計測装置をつけた2人の被験者

  • 平成24年12月8日~9日、雪の降りしきるなか、金沢大学サテライト・プラザ(金沢市)および北陸先端大学院大学(JAIST)において開催。
  • 来夏の国際認知学会(ベルリン)で研究成果を発表することを決定し、そのための準備作業に入った。そこで提示予定の、共同注意における<ロボット>対<人>のインタラクション実験に先立ち、<人>対<人>の視線対象推測実験(写真)を行い、情動的要素を組み込んだ基礎データを蓄積することになった。このデータを基に、本プロジェクトの目標である意図の相互帰属を可能とする、最終段階の共同注意ロボットを作成する。
  • また、大隅書店(大津市)の大隅直人氏にも参加いただき、本プロジェクトのテーマを中心とした論文集刊行についての打ち合わせを行った。
視線対象のカード(1)

視線対象のカード(1)

視線対象のカード(2)

視線対象のカード(2)

4.田邊宏樹先生講演と第4回研究打ち合わせ

  • 平成25年2月2日~3日、名古屋大学文学部大会議室で開催。
  • 田邊宏樹准教授(名古屋大学大学院環境学研究科)に「脳機能イメージングによる見つめ合いと共同注意の神経基盤」について講演していただき、その成果を基に、翌日、国際認知学会(8月、ベルリン)発表用に提出した要旨を中心に、今後の実験方法について研究打ち合わせを行った(発表要旨PDF)。
発表スライドを前にする田邊先生

発表スライドを前にする田邊先生

会場の様子

会場の様子

Ⅰ 平成23年度

1.第1回研究打ち合わせ

  • 平成23年4月24日、南山大学で開催
  • 年度当初に当たり、本プロジェクトの最終目標とその工程、および本年度の活動計画を決定した。

2.「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会第1回大会への参加と第2回研究打ち合わせ等

沖縄科学技術大学院大学(OIST)への訪問(1)

「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会の様子

沖縄科学技術大学院大学(OIST)への訪問(1)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)への訪問(1)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)への訪問(3)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)への訪問(2)

  • 平成23年8月28日~9月3日、琉球大学で開催。
  • 「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会第1回大会「複雑系科学と応用哲学の最前線」に本プロジェクトとして参加し、同時に、吉満昭宏講師(琉球大学法文学部)を交え、研究打ち合わせを行った。
  • また、あわせて、沖縄科学技術大学院大学(OIST)銅谷 賢治研究室を訪問した。
主催 「複雑系科学と応用哲学」沖縄研究会
日時 2011年8月29日(月)10:00~
8月31日(水)17:00
場所 琉球大学千原キャンパス法文棟
連絡先 琉球大学法文学部講師・吉満昭宏

本プロジェクト・メンバーの発表

  • 柴田正良「『自閉症の倫理学』を巡る2~3の事柄」
  • 金野武司「心の哲学とロボット工学の出会い~ロボットの持ち得る意図的主体性は人の心的表象の理解にどのように迫れるか」
  • 長滝祥司「心の観測装置としての身体表現―マインド・リードをめぐる実験哲学の試み―」
  • 橋本敬「言語とコミュニケーションの進化~実験アプローチの展開」

 

3.第3回研究打ち合わせ

  • 平成23年12月3日~4日、ヴィアイン金沢、および北陸先端科学技術大学院大学で開催。
  • 大平英樹氏が「意思決定に伴う脳と身体の機能的関連」と題する報告を行い、それに引き続き、メガネ型視線計測装置の試用とそれを用いた実験計画について討議した。

4.子安増生先生講演と第4回研究打ち合わせ

子安先生とこの日の参加者

  • 平成23年2月17日、京都大学で開催。
  • 子安増生教授(京都大学大学院教育学研究科)に「乳幼児における共同注意現象」について講演していただき、あわせて同教授を交え「ロボットによる心の実現」に関して研究打ち合わせを行った。

5.第5回研究打ち合わせ

  • 平成24年2月29日、中京大学で開催。
  • 金野武司氏が第4,第5段階のロボット制作の方針について報告した後、それを中心に次年度の作業内容について討議した。